マスク、フェイスシールドのCEマーキング

 

マスク、フェイスシールドのCEマーキング

新型コロナウイルス(COVID-19)が世界的に流行しており、現在も非常に多くのお問合せを頂いております。

そこで今回は、コロナウイルスの感染拡大防止、収束のために奮闘する日本メーカー様に有益な参考情報を提供できるように、欧州向けマスクやフェイスシールドのCEマーキング適合について、ご紹介致します。

 

マスクやフェイスシールドに適用されるEU法令とは?

欧州にマスクやフェイスシールドを出荷するためには、まず適用されるEU法令について調べるところからスタートします。

CEマーキング制度では、製品に適用される指令の適合証明が必要になります。

どの指令に該当するかを選択し、適用される指令に適合した製品を設計・製造することは、製造者責任となります。

マスクのような多くの一般人向け製品は、出回る製品数が非常に多いため、製造者は製造責任として、大きなリスクがあると考えるべきです。

そのため、適合証明についても慎重に行わなければなりません。

 

コロナウイルスは、くしゃみや咳、話す時に、感染した人々が放出する小さな空中飛沫を介して伝染します。

従って、空中の粒子や小さな液滴に対する保護を確実にするために設計された幅広い保護製品が使用されています。

フェイスマスク、フェイスシールド、手袋、カバーオールなどのこれらの製品のほとんどは、特定のEU法令下における「整合製品」とされています。

FFP(Filtering Face Piece)タイプのマスクを含む、現在の健康危機の状況下で使用されている製品の大部分は、個人用保護具(PPE)と見なされているため、PPE指令(2016/425/EU)の適用範囲に含まれます。

医療用手袋、サージカルマスク、集中治療、その他の医療機器などのその他製品は、医療機器に関するEUの法的枠組みの範囲内にある製品であり、医療機器規則(2017/745/EU)に該当します。

 

PPE指令(2016/425/EU)とは?

フェイスシールドやフェイスマスクは、PPE指令(Personal Protective Equipment Directive:個人用保護具指令)に該当します。

PPE指令(2016/425/EU)は、個人用保護具の設計、製造、およびマーケティングを対象としています。

EU域内市場のPPEがリスクに対して、最高レベルの保護を保証・提供することを法的義務として定義しており、PPEに適合して付けられたCEマーキングは、該当するEU法令への製品の適合証明を表しています。

 

PPEとは、個人用保護具であり、指令原文では下記のように定義されています。

 

<PPE(個人用保護具)の定義>

a) 人の健康または安全に対する1つ以上のリスクから保護するために、人が着用または保持するように設計、製造された機器

b) a)で対象となる機器の交換可能な部品(コンポーネント)であり、その保護機能として不可欠なもの

c) a)で対象となる人が保持または着用しない機器の接続システムであり、それらの機器を外部装置または信頼できる固定点に接続するように設計され、恒久的に固定されるように設計されておらず、使用前に固定作業を必要としないもの

 

PPE指令(2016/425/EU)が適用される製品は、PPEの定義に該当するものが適用対象になります。

下記に該当するものは、PPE指令の適用対象外となります。

 

<PPE(個人用保護具)指令の対象外となるもの>

(a)軍使用または法と秩序の維持のために特別に設計されたもの

(b)スポーツ活動を目的としたPPEを除いて、自己防衛のために使用されるように設計されたもの

(c)個人的な使用のために設計され、

 (i)極端な性質のものではない大気条件、

 (ii)食器洗い中の湿気と水から保護するもの

(d)EU加盟国で適用される関連国際条約の対象となる海上船舶または航空機での排他的使用

(e)ユーザーの頭、顔、または目を保護するもの(オートバイおよびモペットの運転者と乗客用の保護用ヘルメット、バイザーの承認に関する統一規定で、欧州経済委員会の第22規則によってカバーされるもの。)

 

コロナウイルス関連のPPE製品について

EU委員会PPE指令のホームページでは、「コロナウイルス関連のPPE製品について」次のようにアナウンスされております。

EU市場向けの新しい保護器具の製造について

EU全域の経済事業者は、それぞれの製造および流通能力を高めるために絶え間なく取り組んでいます。

破壊的な要因の影響を緩和するために、新しい製造ラインを立ち上げたり、サプライヤベースを多様化したりして、サプライチェーンを再設計しています。

EUでは、保護具の生産と供給を増やすために、以下を含み、あらゆる手段を検討しています。

・既存のEU製造施設の能力を増強するための支援策を特定し展開する

・EU市場でアクティブに活動していない企業への働きかけ

・繊維部門など、他の産業部門の生産ラインを変更し、保護器具を生産する

 

製造業者が既存設備を変更し、PE(保護器具)を製造できるかどうかを評価するために、製造業者向けのガイダンスを公開しました。

製造業者が自社製品をEU市場に出荷するために必要な、適用可能なEUの法的枠組みと手順について詳しく説明しています。

このガイダンスは、2020年3月27日付けで発行されたもので、PPE指令(2016/425/EU)の適合性評価に関するQ&A文書です。

このQ&A文書は、現状の欧州向けマスク等の規制状況について記載されていますので、ここでご紹介します。

 

このQ&Aの中で、製造者にとって最も重要なポイントは、後述にある2020年3月13日付けで発行された勧告(2020/403/EU)に基づき、欧州の整合規格に基づいていない製品(整合規格以外の技術基準を用いている場合)でも、市場流通を迅速に行えるようにするため、欧州通知機関(NB : Notified Body)に考慮するように勧告されている点です。

 

つまり、欧州整合規格以外の他の技術基準(例えば、米国規格NIOSH N95等)でも、PPE指令の必須要求事項を満たしていると保証される場合、NBは円滑な認証を行うようにとEU委員会より勧告されています。

詳細は原文をご確認下さい。

 

生産能力の増強と保護器具の承認の加速

2020年3月20日、欧州標準化委員会CENとEU委員会は、関連するすべての欧州整合規格を自由かつ完全に利用できるようにすることで、これらの必須製品の欧州生産能力を増強することに同意しました。

 

欧州整合規格は、法規制の安全要求に確実に準拠するために、業界が使用する技術仕様であり、市場アクセスを妨げられないようにします。

通常、企業はEU標準化組織から整合規格を購入し、その使用はIPR規則によって制限されています。

 

また、2020年3月13日、EUは健康と安全の基準に妥協することなく、過度の遅延なしに、整合基準に基づいていない新製品の取り込みを加速するよう勧告(2020/403/EU)を出しました。

 

この勧告(2020/403/EU)は、COVID-19の感染拡大防止のために必要なPPE(個人用保護具)、及び医療機器を確保することを目的としており、EU市場全体でのPPE、及び医療機器の需要と供給に確実に対応するために出されました。

 

また、2020年4月24日、貿易総局(Directorate-General for Trade)は、PPE輸出認可スキームを30日間調整する一時的な措置を導入しました。

 

これらPPE指令の緩和措置に関する最新状況については、EU委員会のホームページのニュースをご覧下さい。

 

*2020年5月26日付けのニュースでは、「コロナウイルスのパンデミック発生に対する関連製品の供給が適切であることを保証するために、2020年3月に導入された個人用保護具(PPE)の輸出認可スキームは、本日(2020年5月26日)をもって計画どおり適用を中止します。」と掲載されています。

 

PPE指令(2016/425/EU)に適合するための手順

それでは、具体的にPPE(2016/425/EU)に適合するまでの手順を見ていきましょう。

PPE指令(2016/425/EU)の原文を併せてお読み下さい。

 

PPE指令(2016/425/EU)の必須要求事項とは?

PPE指令の必須要求事項は、第5条に記載されており、付属書IIに規定されている本質的な健康と安全要求を満たさなければならないとされています。

つまり、PPE指令では、付属書Ⅱに記載されている必須要求事項に適合した製品であることを証明しなければなりません。

付属書Ⅱは、次の1.~3.で構成されています。

1. GENERAL REQUIREMENTS APPLICABLE TO ALL PPE

 (全てのPPEに適用する一般要求)

2. ADDITIONAL REQUIREMENTS COMMON TO SEVERAL TYPES OF PPE

 (PPEのいくつかのタイプに共通する追加要求)

3. ADDITIONAL REQUIREMENTS SPECIFIC TO PARTICULAR RISKS

 (特定の固有リスクの追加要求)

 

PPE指令(2016/425/EU)の適合性の証明について

付属書Ⅱの1~3に挙げられた要求事項を満たしていく必要があるのですが、次のステップは、どのように適合性の証明を行っていくのか?についてご説明します。

 

第3章を見てみますと、PPEの適合性について記載されています。

第14条では、PPE指令への適合性の推定として、「EU官報の整合規格リストに掲載されている整合規格を用いて評価し、整合規格に準拠しているPPEは、付属書IIに記載されている必須要求事項である本質的な健康と安全要求に適合していると見なされます。」と記載されています。

一般的に適合性の証明方法は、この第14条に記載されたEU整合規格を使って評価/試験を行い、適合証明を行っていきます。

第15条では、「EU適合宣言」について記載されており、製造者は、適合性を証明し、製品がPPE指令に適合していることを宣言するための方法が記載されております。

 

1. EU適合宣言には、付属書Ⅱに規定されている該当する基本的な健康と安全要求が満たされていることが示されていることを明記するものとします。

2. EU適合宣言は、付属書Ⅸに記載されているモデル構造を備え、付属書Ⅳ、Ⅵ、Ⅶ、およびⅧに記載されている関連モジュールで指定された要素を含み、継続的に更新されるものとします。

これは、PPEが販売されている、または市場で利用可能になっている加盟国が必要とする言語に翻訳されるものとします。

3. PPEがEU適合宣言を必要とする複数のEU法令の対象となる場合、そのようなすべてのEU法令に関して、単一のEU適合宣言を作成するものとします。

その宣言には、参照出版物(規格等)を含め、関連する識別情報(トレーサビリティ情報)が含まれるものとします。

4. EU適合宣言書を作成することにより、製造業者は、PPE指令に定められた要求に準拠する責任を負うものとします。

 

順番に説明していきます。

1項目は、適合宣言を行うためには、付属書Ⅱに記載されている必須要求事項を満たしていることを宣言書に含めて下さいということを言っています。

 

2項目は、適合性評価として、付属書Ⅳ、Ⅵ、Ⅶ、Ⅷに記載された適合性評価モジュールを用いて適合性評価を行い、EUへの出荷を継続して行う場合は、適合性を維持更新していって下さいということが記載されています。

付属書Ⅳは「モジュールA(製造者による内部生産管理)=自己宣言」について、付属書Ⅴの記載が抜けておりますが、付属書Ⅴは「モジュールB(EU型式審査)」、付属書Ⅵは「モジュールC(内部生産管理に基づく型式適合)」、付属書Ⅶは「モジュールC2(内部生産管理に基づく型式適合とランダムな間隔で行う監視下の製品確認)」、付属書Ⅷは「モジュールD(生産プロセスの品質保証に基づく型式適合)」というように、適合性評価モジュールA、B、C、C2、Dを用いて適合性について評価して下さいということを言っています。

また、取扱説明書などの各資料についてもEU加盟国で使用される言語に翻訳して下さいということも記載されています。

 

3項目は適合宣言書には、複数の指令が該当する場合、単一の適合宣言書に記載して下さいということを説明しています。

適合証明に用いた整合規格も記載する必要があります。

 

4項目は、記載されているままですが、製造業者は、PPE指令に定められた要求に適合している製品であることに責任を持たなければならないということです。

 

PPE指令(2016/425/EU)の適合性評価について

ここまでの流れをまとめると、まずPPE指令の必須要求事項があり、この要求に適合した製品であることを証明するために適合性の証明方法があります。

次は、適合性の証明を行うための適合性評価についてです。

 

第4章では、「適合性評価」について記載されています。

PPE指令の適合性評価は、まず第18条「リスクカテゴリー」によって、カテゴリー分けされます。

製品が、付属書Ⅰに記載されているリスクカテゴリーⅠ~Ⅲのどれに該当するのかを判断します。

 

付属書Ⅰ「PPEリスクカテゴリーの分類」

<カテゴリーⅠ>

カテゴリーIでは、以下の最小限のリスクのみが含まれます。

(a) 体表の機械的な損傷

(b) 作用の弱い洗浄剤との接触、または水との長時間の接触

(c) 50℃を超えない高温表面との接触

(d) 日光への曝露による目への損傷(太陽の観察中以外)

(e) 極端な性質ではない大気条件

 

<カテゴリーⅡ>

カテゴリーⅡは、カテゴリーⅠ及びⅢにリストされている以外のリスクが含まれます。

 

<カテゴリーⅢ>

カテゴリーⅢは、以下に関連する死亡、または健康に不可逆的な損傷などの非常に深刻な結果を引き起こす可能性のあるリスクのみが含まれます。

(a) 健康に有害な物質および混合物

(b) 酸素欠乏の雰囲気

(c) 有害な生物剤

(d) 電離放射線

(e) 少なくとも100℃の気温になる高温環境

(f) 気温が-50℃以下の気温になる低温環境

(g) 高所からの落下

(h) 感電及び活電作業

(i) 溺死

(j) 手持ちチェーンソーによる切断

(k) 高圧ジェット

(l) 弾丸による傷またはナイフによる刺し傷

(m) 有害なノイズ

 

製品がどのリスクカテゴリーに当てはまるのかによって、適合性の証明を行うための適合性評価モジュールが分かれています。

 

該当するカテゴリーが決まったら、次は適合性評価手順について確認していきます。

 

適合性評価手順

第19条「適合性評価手順」では、次のとおり(a)~(c)に適合性評価手順が分かれております。

 

(a) カテゴリーⅠ:

付属書Ⅳに記載されている内部生産管理(モジュールA)。

(b) カテゴリーⅡ:

付属書Ⅴに記載されたEU型式審査(モジュールB)+付属書Ⅵに記載された内部生産管理(モジュールC)に基づく適合。

(c) カテゴリーⅢ:

付属書Ⅴに規定されているEU型式審査(モジュールB)+以下のいずれか:

 (i) 付属書Ⅶに記載されている内部生産管理に基づく型式適合とランダムな間隔で行う監視下の製品確認に基づく適合(モジュールC2)。

 (ii) 付属書Ⅷに記載されている生産プロセスの品質保証に基づく型式適合(モジュールD)。

また、特例として、個人ユーザーに適合する単体ユニットとして製造され、カテゴリーⅢに従って分類されたPPEについては、(b)で言及された手順に従うことができます。

 

まとめますと、カテゴリーⅠの製品はモジュールAが適用されますので、製造者による自己宣言が可能です。

カテゴリーⅡ、Ⅲの製品はモジュールB、C、C2、Dが適用されますのでEU委員会が認める欧州通知機関(NB : Notified Body)による関与が必要となります。

PPE指令のNBリストよりご確認下さい。

 

つまり、カテゴリーⅡ、Ⅲの製品は、PPE指令のNBによる型式審査を必要とします。

 

一般的にFFP2やFFP3などの防護マスクや防毒マスクは、着用者の健康に対して危険物質から保護するように設計されているため、主にPPE指令のカテゴリーⅢに該当します。

弊社では、どのカテゴリーに該当するのか?について、判断することはできませんので、NBにお問合せ下さい。

 

マスクに適用される整合規格

PPE指令(2016/425/EU)に適合していることを証明するためには、欧州委員会が発行する整合規格リストに記載されている整合規格を用いて適合性を評価することが一般的です。

PPE指令の整合規格リストをご覧下さい。

 

整合規格の適用は製造者判断によりますが、一般的にPPE指令(2016/425/EU)で扱われるFFPフェイスマスクでは、EN149:2001+A1:2009が適用され、医療機器規則(2017/745/EU)に該当する外科用マスクでは、EN 14683:2019が適用されます。

 

PPE指令(2016/425/EU)の欧州整合規格リストを参照して下さい。

 

関連ページ 「CEマーキング適合支援サービス」

 

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2020年06月15日