CEマーキング制度

CEマーキングとは

CEマーキング制度

*この記事は、2021年9月16日に更新された記事です。

CEマーキングの概要を知るためには、EUが行ってきた過去の法令の仕組みを理解することが一番の近道になります。

それでは、EUの法規制について理解するために、EUの発足と法令について順を追って見ていきましょう。

EUの単一市場の形成

現在のEUでは、自由に物品を移動・販売ができる単一市場が機能的に形成されています。

過去40年間において、EUの方針や立法手段は変化を遂げて発展してきました。

CEマーキングを行うことで物品の自由な移動を行うことができるようになったのは、EU加盟各国が貿易障壁の除去をなくす努力をおこなってきたからです。

このCEマーキングという制度を知るために、EUは過去4つの段階を経て現在の規制が成り立っているということを知っておくと、よりわかりやすいと思います。

EUは下記の4つの段階を経てCEマーキング制度を確立してきました。

第1段階 「オールドアプローチ」

EUは、複数の加盟国によって構成されている為、加盟国間の統制のため、EUの法律を定め、それを各加盟国が遵守していくことが必要となります。

法律をどのように守っていくのか?

最初のアプローチとして考え出されたのがこの「オールドアプローチ」と呼ばれる方法です。

オールドアプローチの特徴は、「必須要求事項」と「詳細な技術基準」を法律自体に一緒に盛り込み、運用することで、貿易障壁の除去を目指してきました。

しかし、オールドアプローチと呼ばれるこの法的枠組みでは、法律自体に詳細な技術基準を制定している為、世の中の技術革新が進むに連れて、技術的な規制内容を改訂していかなければなりませんでした。

法律自体を頻繁に改定するとなると、EU加盟国間の調整等で時間がかかり、世の中の技術の進歩についていくことが困難となり、なかなか整合が進まず、統制できない方法でした。

このような欠点を補うべく登場したのが、次に挙げる「ニューアプローチ」という方法です。

第2段階 「ニューアプローチ」

オールドアプローチでは、法令自体に細かい技術基準が記載してあるため、各国間で解釈に違いが出たとしても法律を変えるには各国間の意見を取り合わなければならず、整合化がなかなか進みませんでした。

このような欠点を改善するために、考えられたのが「ニューアプローチ」という方法です。

1985年欧州理事会は、EU域内の自由流通における貿易障壁の除去を目的とした「技術的整合化と基準に関するニューアプローチ」に関する決議を行いました。

この「ニューアプローチに関する決議内容」とは、法令では、具体的な技術詳細には触れずに「製品は包括的に安全であること」だけを要求しており、「どのような安全性を求められているのか?」に関しては規格の方で要求しています。

つまり、ニューアプローチという方法では、法律となる各指令では、抽象的な表現で安全性についてのみを要求しており、その要求を満たすための技術的基準や具体的な方法については、規格で決めて運用していきましょうということです。

例えば、EMC指令を例に挙げると、EU法令であるEMC指令では「電磁波による干渉問題を起こさないようにしなさい。」と要求しているだけですが、この要求に対する具体的な試験や方法、限度値などの技術基準は、製品に適用する整合規格で定められております。

このように、ニューアプローチとは、法令には、必須要求事項のみを記載し、詳細な技術基準は規格に記載して運用していくという方法です。

ニューアプローチという法形態を採ることで、法律を製品技術に応じて、技術基準を定めることで、法律自体を変えずに技術基準を定めた規格を改訂していくことができるため、大きなメリットがあるのです。

ニューアプローチ指令という言葉をよく耳にすることがありますが、これは、「ニューアプローチに関する決議」を基にして発効された複数の指令があり、これらの指令を包括的にニューアプローチ指令と呼んでいます。

幅広い製品分野をカバーするため、ニューアプローチ指令は、20数種類の指令があります。

第3段階 「ニューアプローチ」と「グローバルアプローチ」(CEマーキング制度の発足)

ニューアプローチに適合している製品なのかどうかを証明するための手段として考えられたのが「グローバルアプローチ」です。

グローバルアプローチとは、モジュールという単位で適合証明の審査方法を区切り、その製品に該当する法令毎に適合性評価を行っていくことができるものです。

ニューアプローチとグローバルアプローチを組み合わせて使うことで、CEマーキング制度が発足しました。

第4段階 「NLF (New Legislative Framework)」

ニューアプローチやグローバルアプローチの問題点を改善するために、より効果的な適合性評価や、EU域外から輸入される製品の市場監視のために考えられたのが、NLF (New Legislative Framework 新しい法的枠組み)です。

現在は、このNLFを基にしてCEマーキング制度が運用されています。

EU発足の歴史的背景

EUの発足は、下記3つの機関が母体となっております。

① 1951年 欧州石炭鉄鋼共同体 ECSC (European Coal and Steel Community)
② 1958年 欧州経済共同体 EEC (European Economic Community)
③ 1958年 欧州原子力共同体 EURATOM (European Atomic Energy Community)

これら3つの機関が統合し、「欧州共同体 EC (European Communities)」となり、その後、1993年にはECに代わるものとして「欧州連合 EU (European Union)」となりました。

EUは、次に挙げるような条約を締結する毎に重要な改革を行いながら、変化を遂げ、現在のEUとなりました。

・1951年 パリ条約 欧州石炭鉄鋼共同体 ECSC (European Coal and Steel Community)の発足
・1958年 ローマ条約(EEC条約) EECとEURATOMの設立 共通市場の形成、関税同盟の締結(域外関税の統一)
・1967年 ブリュッセル条約(合併条約) 3つの共同体を統合し欧州諸共同体(EC)となる
・1987年 単一欧州議定書 ローマ条約の修正、欧州の単一市場化、欧州政治協力を設立
・1993年 マーストリヒト条約(欧州連合条約) ユーロの創設、3本の柱構造、EU発足
・1999年 アムステルダム条約 ローマ条約とマーストリヒト条約の修正
・2003年 ニース条約 EU拡大のための機構制度改革等
・2009年 リスボン条約 EU基本条約を修正、2本構造、ECからEUへ

ECからEUへの変移

現在のEUは、加盟国28カ国によって形成されております。

世界大戦後に発足したEUの本質的な目的は、

• 「二度と戦争を起こさない」

• 「欧州内で自由市場を形成し経済を発展させる」

• 「安全を確保する」

このような思想のもと、複数の国家間による共通ルールで形成された国際機関になっています。

民族性や文化、歴史、言語など、国によって様々な違いのある中で、加盟国間で同じルールを作り、それを守っていくという国を超えた制度であり、それゆえにEUは、「超国家的組織」と呼ばれています。

EUの法体系 (第一次法と第二次法)

欧州の法体系図

EUの法体系は、国際条約を指す「第1次法」と、その国際条約を実現していくための「第二次法」に分けられます。

第1次法では、これからどのような方向に進むのかといった大きな方向性を決めており、第2次法は第1次法を如何に実現していくかという実現性を補うためのものになります。

第1次法とは

EUの「第1次法」とは、EU統合の過去40年間に何度も遂げられてきた国際条約であり、重要な改革を行ってきた各条約のことです。

第1次法は、EUの法規制における最高位に位置づけられるものであり、日本でいうと憲法に相当します。

EUの目標、原則、機構制度、立法の手続きやEU域内の市民の権利など、重要原則を定めたものです。

<第1次法にあたる主な条約>

・1958年 ローマ条約(EEC条約)
・1967年 ブリュッセル条約(合併条約)
・1987年 単一欧州議定書
・1993年 マーストリヒト条約(欧州連合条約)
・1999年 アムステルダム条約
・2003年 ニース条約
・2004年 欧州憲法条約(批准で見送り発効に至らず)
・2009年 リスボン条約

第1次法は全加盟国の全会一致によって制定され、批准(最終的な確定)の後、発効されます。

第2次法とは

EUの「第2次法」とは、第1次法を実現するために補う法のことです。

第1次法は加盟国の全会一致で決定し制定されますが、第2次法は、第1次法に基づき、EUの各機関が制定します。

第2次法には、下記の5種類の法形態があります。

• 規則 (Regulation)

• 指令 (Directive)

• 決定 (Decision)

• 勧告 (Recommendation)

• 見解 (Opinion)

EUの法体系(規則・指令・決定・勧告・見解)

CEマークに携わる方であれば「規則」、「指令」はよく耳にする言葉だと思います。

それでは、順番に説明していきます。

特に、「指令」という言葉の意味を理解しておくとCEマーキングの実業務でも役立つことだと思います。

(1)「規則 (Regulation)」とは

規則とは

「規則」とは、EU全加盟国の法令を統一するために制定された法令です。

「規則」という法令は、EU全加盟国に対して直接法的効力を持つため、ドイツでもフランスでもイタリアでも加盟国であれば全てこの法令(規則)に従わなければなりません。

そのため、各国の国内で別に法令を定めるような必要はなく、EU共通の法令として適用されます。

この規則は、一般個人に対しても直接、法を課す(権利や義務を与える)ことができるものです。

規則として有名なのは「REACH規則」でしょうか。

化学物質の総合的な登録、評価、認可、制限を行う「REACH規則」は、EU域内で共通した法令を全ての加盟国に対して、課しているということになります。

規則とは、全加盟国・全ての個人に対して直接効力を持つ法令のことです。

(2)「指令 (Directive)」とは

指令とは

「指令」とは、EU加盟各国に対し適用される法令です。

EU加盟国に一定の裁量を与えるので、自国内で指令の目的・趣旨などを考慮し、独自判断して法令を制定してくださいという法形態をとっています。

ですので、国によって内容が違う場合があります。

指令は、EU加盟国の調整を目的とした法令であり、EU各加盟国の国内法として統一が難しい場合に使われます。

加盟国に一定の判断権限を与えることで、各国間の障壁を低くするという法規制ですので、EU域内の市場流通に多用されています。

EMC、機械、低電圧、Rohsなどは、この「指令」に該当します。

「指令」は、定められた所定期間内に国内法として置換なければなりませんが、各国がこの義務に違反せず法整備をおこなっているかどうかは、欧州委員会により調査されることになっております。

指令により置き換えた国内法に法的拘束力がないとか、規範性に欠けるような不十分なものだと、指令の目的を十分に果たしているとは言えず、置き換えたということにはなりません。

指令とは、EUから指令という法令が発効された後、各加盟国はその指令に対する自国の国内法を制定しなければなりません。

具体的な例を挙げると、EMC指令がEUより発効された場合、このEMC指令の要求事項を満足できるように、EUの規格制定機関(CENELEC, ETSI,CEN)でEN整合規格が制定されます。

各加盟国は、この整合規格を参考にEMC指令の内容を網羅するような自国の規格を制定します。例えば、ドイツであればDIN EN、フランスであればNF EN、イタリアであればCEI ENというように、自国の規格協会で規格を制定し、国内法として運用します。

(3)「決定(Decision)」とは

決定とは

「決定」とは、特定の対象者(加盟国、企業、個人)に対して、直接、法的効力を持つ法令です。

「決定」は、特定の加盟国、特定の個人に対して直接、法律が適用されるもので、具体的な行為の実施、廃止などを実行するための法令として発効されます。

押さえておきたいポイントとして、「規則」と「決定」の違いは、「規則」は全ての加盟国、全ての個人を対象としていますが、「決定」は特定の加盟国、特定の企業や個人を対象にしています。

この”特定の” というところがポイントです。

(4)「勧告(Recommendation)」とは

勧告とは

「勧告」とは、特定の対象者(加盟国、企業、個人)に対して、一定の行動の実施を勧める行政措置であり、法的効力は持ちません。

(5)「見解(Opinion)」とは

見解とは

「見解」とは、法案を提出する欧州委員会の意思表明をしたもので、法的効力は持ちません。

CEマーキングで適用されるニューアプローチ指令とは

上記でも説明しましたが、EUの法体系は、法律自体に詳細な技術基準を盛り込んだ「オールドアプローチ」という法的枠組みから、「ニューアプローチ」、「グローバルアプローチ」と移行し、現在では「New Legislative Framework(NLF)」という法的枠組みで運用されております。

現在のNLFの基本的な法的枠組みは、「ニューアプローチ」、「グローバルアプローチ」を基にしたものであり、その基本となる「ニューアプローチ」では、CEマーキングに必要な複数の指令が発効されております。

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各指令に対する試験の実施から評価レポートや技術文書、EU適合宣言書等の文書類作成など、CEマーキング業務の最初から最後まで、一貫した業務対応を行っております。

他社には負けないCEマーキングの実務経験の豊富さや、専門知識を持つ技術者が直接お客様のサポートを致しておりますので、お客様の業務工程が計画通りにスムーズに進みます。

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【イーエムテクノロジー株式会社 技術部】

 

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