3ステップメソッド ステップ2 「付加保護方策」

 

3ステップメソッド ステップ2 「付加保護方策」 (非常停止ボタンなど)

 前回コラム「安全防護策②」の続きとして、今回は「付加保護方策」について、ご紹介していきたいと思います。

付加保護方策とは、ガードやセンサー等による検知保護装置を使ってもリスクを十分に低減できない場合に適用する保護方策です。

わかりやすい例として、非常停止ボタンの使用が挙げられます。

 

付加保護方策とは?

 付加保護方策とは、リスク低減にあたり、機械の意図する使用、及び合理的に予見可能な誤使用において、本質安全設計方策でなく、安全防護(ガードや保護装置の使用)でもなく、使用上の情報(警告ラベルやマニュアル等)でもない保護方策を実施しなければならない場合があります。

安全防護策は、隔離の原則に基づき、ガードの様な危険区域への接近を制限するものや、停止の原則に基づき、保護装置のような危害が発生する前に、インターロックを使用して機械を停止させるといったものであるため、機械の一部になっている場合がほとんどです。

しかし、付加保護方策の場合、安全防護策のように災害を未然に防ぐといったものではなく、人が使用して初めて保護方策が働く、若しくは、正しく使用して初めて効果が表れるといったものとなります。

安全防護策と付加保護方策との大きな違いは、この点にあると言えます。

 

付加保護方策の例

 付加保護方策は、主に下記のように挙げることができます。

- 非常停止

- 閉じ込められた人々の避難及び救出の方策

- 機械への安全な接近のための方策

- 機械及びその重量構成部品の容易で安全な取扱いのための備え

- 分離及びエネルギ放散の為の方策

 

- 非常停止

 

 非常停止ボタンと言えば、一般的には黄色の背景に赤色のキノコ型の非常停止スイッチが思い浮かぶと思います。

非常停止スイッチは、作動すればインターロック機構と同じように機械を停止する事ができるものになります。

安全防護策として使われる検知保護装置のインターロックは、例えばガードに付けられたインターロックが検知すると機械が自動的に停止するものです。

しかし、非常停止は、人が非常停止スイッチを押して初めて、機械を停止させることができるものになります。

この点が、保護装置のインターロックと付加保護装置の非常停止スイッチの大きな違いです。

 

このため、非常停止ボタンのアクチュエータは、明確に識別が可能であり、明確に視認でき、且つ速やかに接近(アクセス)できることが要求されています。

スイッチの背景色やスイッチ色が規定されているのは、この理由からきています。

 

また、非常停止ボタンが押され、機械装置が再起動した場合、電源リセットのみで機械が動き出すことがあってはなりません。

必ず、電源リセットを行った場合は、何らかのスタート操作を行い、動作できる状態にすることが必要です。

つまり、再起動防止回路の構築が必要となります。

 

非常停止スイッチは、一般的にはスイッチタイプのアクチュエータが使用されていますが、以下のようなアクチュエータも非常停止機器として使用されている場合があります。

- ワイヤ、ロープ、バー(コンベア等の長い製品に使用されることが多いです。)

- ハンドル(メインブレーカと一体の場合があります。制御盤に備えられている黄色背景、赤ハンドルのブレーカがこれに当てはまります。)

- 特別の用途では、保護カバーなしの足踏みペダル(足で踏むタイプのアクチュエータとなります。)

 

非常停止の要求は、EN ISO 12100(JIS B 9700)や電気的要求については、EN IEC 60204-1(JIS B 9960-1)に定められています。

また、非常停止専用のB規格として、ISO 13850(JIS B 9703)といった規格が出ておりますので、これらの規格を基に非常停止の設計を進める必要があります。

 

欧州CEマーキングの場合は、非常停止規格の欧州版として、EN ISO 13855:2015が現行版が発行されております。

現行のJIS版は、2006年度版の対応JISとなっておりますので、現行の欧州規格に対し、内容がかなり古いものなっています。

JIS規格を使用する際はご注意ください。

欧州の2015年度版の規格については、2016年5月末より適用が必要となっております。

 

- 閉じ込められた人々の避難及び救出の方策

 機械内部に閉じ込められてしまった、または捕捉された人の避難、救出の方策の例として、以下のようなものが挙げられます。

 

・作業者の脱出ルートや避難場所の確保

・機械に挟まれた際に非常停止を押した後に可動部分を手動で動かす為の手段

・機械内部に閉じ込められた場合に内部からドアを開放する為の手段

 

- 機械への安全な接近のための方策

 階段やプラットフォーム等を指します。

但し、可能な限り機械の設計時には、運転や設定、保守等の作業を地上から行えるように考慮しなければなりません。

 

- 機械及びその重量構成部品の容易で安全な取扱いのための備え

 機械そのもの、または機械の構成部品が人の手で持ち運べない場合の備えとなります。

例えば、アイボルトやフック等の吊り上げ用器具の準備や、フォークリフトの差し込み口の準備等が当てはまります。

 

- 分離及びエネルギ放散の為の方策

機械への動力供給を遮断、または機械内部に蓄積されたエネルギーを消散させる手段が該当します。

 

・動力供給を遮断する為の手段として;

 電気供給: ブレーカ、電源スイッチ等

 空圧、油圧供給: 手動バルブ等

 

・蓄積エネルギを消散させる為の手段として;

 電気: 放電回路の使用

 空圧、油圧: 残圧開放バルブの使用等

 

また、電源遮断手段については、遮断(オフ)位置でロックができる構成が必要です。

一般的な産業機械でCEマーキング対応のために使用されている電気ブレーカーのハンドルやエアー/油圧回路に使用されるメインバルブは、オフ位置において南京錠等でロック可能な構造の部品を使用します。

 

これらの方策は、全て自動的にリスク低減を行うものではなく、人が使用して初めて有効となるものばかりです。

付加保護方策を取り入れる場合は、適切な使用方法をマニュアルや機械上に表示する必要があると考えられます。

 

CEマーキングでお困りごとがございましたら、お気軽に当社までご相談頂ければと思います。

 

関連ページ 3ステップメソッド ステップ1「本質的安全設計方策」

関連ページ 3ステップメソッド ステップ2「安全防護策①」

関連ページ 3ステップメソッド ステップ2「安全防護策②」

関連ページ 3ステップメソッド ステップ3「使用上の情報」

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2019年07月16日