
*この記事は、2026年07月23日に書かれた記事です。
EU向けに産業機械を輸出する場合、CEマーキングへの対応が必要になります。
これまで産業機械のCEマーキングでは、主に機械指令 2006/42/EC が適用されてきました。
しかし、2027年1月20日以降は、新たに制定された「機械規則 Regulation (EU) 2023/1230」に義務的に置き換えられます。
2027年1月20日をもって機械指令 2006/42/EC は、失効します。
つまり、2027年1月19日までの上市は、「機械指令のみ」が有効であり、2027年1月20日以降の上市は、「機械規則のみ」が有効になるということです。
そのため、EU向け機械を設計、製造、輸出している製造者は、2027年1月20日以降に向けて、現在のCEマーキング対応を見直しておくことが重要となります。
本記事では、機械規則対応に向けて確認すべき主な項目を、実務で使いやすいチェックリスト形式で解説します。
<コンテンツ一覧>
- 機械規則対応チェックリスト
- 1. 対象製品が機械規則に該当するか確認する
- 2. 適用されるEU法令を確認する
- 3. 適用する整合規格を確認する
- 4. リスクアセスメントを見直す
- 5. 安全回路及び制御システムを確認する
- 6. 安全性能の確認
- 7. 電気安全構造を確認する
- 8. 電気安全試験を行う
- 9. EMC試験の実施
- 10. サイバーセキュリティを確認する
- 11. 取扱説明書を確認する
- 12. 警告表示を確認する
- 13. 技術文書を確認する
- 14. EU適合宣言書を確認する
- 15. 既存機種の見直し
- 16. シリーズ製品(派生機種)への対応
- 17. 電子マニュアル
- 18. 社内体制の見直し
- 19. 対応スケジュール
- まとめ
機械規則対応チェックリスト
機械規則への対応では、対象製品、適用法令、整合規格、リスクアセスメント、技術文書など、複数の項目を総合的に確認する必要があります。
以下のチェックリストを参考に、自社製品の対応状況を確認してください。
| 確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 1. 対象製品の確認 | 対象製品が機械規則の「機械、関連製品、半完成機械、安全部品など」に該当するか確認する |
| 2. 適用法令の確認 | 機械規則以外に、EMC指令、RoHS指令、無線機器指令などが関係するか確認する |
| 3. 整合規格の確認 | EN ISO 12100、EN 60204-1、EN ISO 13849-1、EMC関連規格など、適用すべき規格を確認する |
| 4. リスクアセスメント | 搬入、据付、運転、清掃、保守、トラブル対応、廃棄まで含めて危険源を洗い出し、リスク低減を行う |
| 5. 安全回路の構築 | 非常停止、インターロック、ライトカーテン、安全PLC、安全リレーなどの安全回路の妥当性を確認する |
| 6. 安全性能 | PL、カテゴリ、MTTFd、DC、CCFなど、EN ISO 13849-1の安全関連制御システムの評価を行う |
| 7. 電気安全 | 主電源遮断、保護接地、感電保護、過電流保護、制御回路、配線などを確認する |
| 8. 電気試験 | 電気試験を実施する |
| 9. EMC試験 | エミッション、イミュニティ試験を実施し、必要に応じてノイズ対策を行う |
| 10. サイバーセキュリティ | LAN接続、USBポート、リモートメンテナンス、ソフトウェア変更、アクセス権限などを確認しサイバーセキュリティ対応を行う |
| 11. 取扱説明書 | 規則及び指令、適用される規格で要求される内容、意図する使用、禁止事項、残留リスク、保守手順、警告表示、現地言語対応などを確認する |
| 12. 警告表示 | リスクアセスメントに基づき、機械本体の警告ラベルが貼付られているか、取扱説明書の記載内容が整合しているかなどを確認する |
| 13. 技術文書 | 回路図、部品表などの各種図面、リスクアセスメント、試験レポート、取扱説明書などを整理する |
| 14. EU適合宣言書 | 適用法令、整合規格、製品情報、製造者情報、署名者情報を確認する |
| 15. 既存機種の見直し | 機械指令でCE対応済みの機械について、機械規則への切り替えが必要か確認する |
| 16. 派生機種・類似機種 | 既存モデルとの差異を確認し、評価資料や技術文書に反映する |
| 17. 電子マニュアル | デジタル形式で取扱説明書を提供する場合、使用者が確実にアクセスできるか確認する |
| 18. 社内体制 | 設計、電気、制御、品質保証、技術文書作成の担当範囲を明確にする |
| 19. 対応スケジュール | 2027年1月20日の適用開始に向けて、評価、試験、文書整備の計画を立てる |
1. 対象製品が機械規則に該当するか確認する
まず確認すべきなのは、対象製品が機械規則の適用範囲に入るかどうかです。
機械規則は、完成機械だけでなく、関連製品及び半完成機械も対象としています。
例えば、単体機械、生産ライン、交換可能装置、安全部品、吊り具、チェーン、ロープ、ベルト、取り外し可能な機械式伝達装置などが関係する場合があります。
確認すべき主な項目は、以下のとおりです。
- 完成機械に該当するか
- 半完成機械に該当するか
- 安全部品に該当するものが含まれるか
- 複数の機械を組み合わせた生産ラインか
- 既存機械を改造しているか
- EU域内で新たに市場投入される製品か
特に、生産ラインや大型設備では、単体機械だけでなく、機械同士を組み合わせた状態でのリスクを確認する必要があります。
2. 適用されるEU法令を確認する
機械規則に対応すれば、CEマーキングがすべて完了するとは限りません。
産業機械では、機械規則以外にも、以下のようなEU法令が関係する場合があります。
- EMC指令
- RoHS指令
- 圧力機器指令
- ATEX指令
- 無線機器指令
- サイバーレジリエンス法
例えば、制御盤、インバータ、サーボアンプ、PLC、タッチパネル、通信機器などを含む機械では、機械安全だけでなく、電気安全やEMCも重要になります。
CEマーキングでは、製品に関係するEU法令を漏れなく確認し、それぞれの要求に基づいて評価を行う必要があります。
CEマークを表示するということは、該当するCEマーキングの対象となるすべてのEU規則及び指令に適合していることを、製造者が宣言することを意味します。
3. 適用する整合規格を確認する
CEマーキングでは、EU法令の要求事項に対して、整合規格を用いて評価を進めることが一般的です。
機械規則では、必須安全衛生要求事項に対して、EU官報に引用された整合規格を活用することが重要になります。
欧州委員会の資料でも、機械規則は必須安全衛生要求事項を、EU官報に引用された整合規格で支える仕組みであることが示されています。
ただし、規格を適用するだけで自動的にCEマーキングが完了するわけではありません。
対象機械の構造、使用方法、設置環境、危険源を確認した上で、適切な規格を選定する必要があります。
4. リスクアセスメントを見直す
機械規則だけでなく、他の規則及び指令にも共通して言えますが、特に重要なのが、「リスクアセスメント」です。
機械のリスクアセスメントでは、機械のライフサイクル全体を考慮して危険源を特定し、リスク低減方策を検討します。
特に、通常運転時だけでなく、段替え、保守作業やトラブル対応時のリスクを見落とさないことが重要です。
また、機械指令で過去にリスクアセスメントを実施している場合でも、機械規則への切り替え時には、以下の点を再確認することをおすすめします。
- 危険源の洗い出しに漏れがないか
- 最新の整合規格に基づいて評価されているか
- 安全回路の妥当性が確認されているか
- サイバーセキュリティに関係するリスクを考慮しているか
- 取扱説明書に残留リスクが反映されているか
5. 安全回路及び制御システムを確認する
機械規則では、従来の機械安全に加えて、制御システムやソフトウェアに関する確認の重要性が高まっています。
欧州委員会の資料では、機械指令から機械規則への主な変更点として、AIに関連する安全機能、サイバーセキュリティ、安全制御システム、適合性に関係するソフトウェア及びデータ、遠隔操作機械、デジタル取扱説明書などが挙げられています。
安全回路は、部品を選定するだけでは不十分です。
危険源に対して必要な安全性能を設定し、その要求を満たしているかを確認しなければなりません。
6. 安全性能の確認
安全回路を構築し、その安全回路の信頼性、妥当性について、確認を行わなければなりません。
安全関連制御システムについては、要求される安全性能を設定し、EN ISO 13849-1等に基づいてPL、カテゴリ、MTTFd、DC、CCFなどを評価する必要があります。
危険源に対する保護として安全システムを構築している以上、その安全回路が故障した場合であっても、危険な状態を生じさせてはならないということです。
7. 電気安全構造を確認する
産業機械では、電気装置の安全性も重要な確認項目です。
特に、制御盤、モーター、ヒーター、サーボ、インバーターなどを含む機械では、感電、短絡、過電流、地絡、配線、保護接地、非常停止、電源遮断などを確認する必要があります。
電気安全の評価では、図面だけでなく、実機での確認や試験が必要になる場合があります。
8. 電気安全試験を行う
電気安全に対する要求は、電気の構造面だけではなく、実機に対して電気試験も実施しなければなりません。
接地導通試験、漏れ電流測定、絶縁抵抗試験などの複数の電気試験を実施し、試験結果は、テストレポートにまとめておく必要があります。
9. EMC試験の実施
機械には、インバータ、サーボアンプ、スイッチング電源、PLC、タッチパネル、通信機器など、多くの電気電子機器が組み込まれています。
そのため、機械規則だけでなく、EMC指令への対応も必要になる場合があります。
特に、大型機械や生産ラインでは、試験サイトでの試験が難しく、その場合は製造現場で実機でEMC試験を行う必要があります。
EMC試験を実施した時に、不適合であれば、ノイズ対策も講じる必要があります。
事前EMC実力試験の実施や図面作成時にEMC対策をある程度盛り込んでおくとよいでしょう。
10. サイバーセキュリティを確認する
機械指令から機械規則への変更点として、特に注目されている項目の一つが「サイバーセキュリティ」への対応です。
機械指令から機械規則への変更点として、重要なテーマです。
サイバーセキュリティ対応で注意すべきなのは、「インターネットにつながっていないから関係ない」とは言い切れない点です。
例えば、以下のような機械では、サイバーセキュリティの観点から確認が必要になる可能性があります。
- LAN接続ポートを持つ機械
- リモートメンテナンス機能を持つ機械
- USBポートを持つ機械
- 保守用PCを接続する機械
- PLCやHMIのプログラム変更が可能な機械
- 安全機能がソフトウェアに依存する機械
- 操作権限やユーザー管理機能を持つ機械
アクセス権限、パスワード管理、ソフトウェア変更管理、バックアップ、ログ管理、不正アクセス対策、通信ポートの管理、保守用インターフェースの管理など、機械がユーザーでどのように使用されるのかを含めて、サイバーセキュリティ対応を行います。
機械の安全機能に影響するソフトウェアやデータについては、不正な変更や意図しない変更によって安全性が損なわれないように考慮する必要があります。
11. 取扱説明書を確認する
CEマーキングでは、取扱説明書も重要な確認対象です。
取扱説明書には、単なる操作方法だけでなく、安全に使用するための情報を記載する必要があります。
適用される規則及び指令、規格に要求される内容、リスクアセスメント結果などを取扱説明書に反映させる必要があります。
また、機械規則では、取扱説明書をデジタル形式で提供する場合の条件も定められています。
例えば、使用者が印刷、ダウンロード、保存できる形式で提供し、機械の故障時にもアクセスできるようにすることが求められています。
そのため、電子マニュアルを採用する場合でも、使用者が安全情報に確実にアクセスできるかを確認する必要があります。
12. 警告表示を確認する
リスクアセスメントに基づき、機械本体に必要な警告ラベルが貼り付けられているか、取扱説明書の記載内容と整合しているかなどを確認しなければなりません。
警告方法には、警告ラベルの貼付だけでなく、アラーム音の発報や、表示灯などの視覚的信号によって作業者に知らせる方法もあります。
なお、視覚的信号については、単に機械の運転状態やステータスを表示するものと混同されやすいため、注意が必要です。
13. 技術文書を確認する
CEマーキングでは、評価した結果を技術文書としてまとめる必要があります。
技術文書は、CEマーキングの根拠を示す重要な資料です。
単に書類をそろえるだけではなく、リスクアセスメント、設計資料、試験結果、取扱説明書、EU適合宣言書の内容が整合していることが重要です。
機械指令で既に技術文書を作成している場合でも、機械規則に合わせて見直しが必要になる可能性があります。
14. EU適合宣言書を確認する
CEマーキングを行う場合、EU適合宣言書を作成する必要があります。
機械規則への切り替えに伴い、EU適合宣言書に記載する法令名、適用規格、製品情報、署名者情報などを確認しなければなりません。
2027年1月20日以降にEU市場へ機械を上市する場合、機械規則に基づいたEU適合宣言書の作成が必要になります。
移行期間中の出荷品については、機械指令に基づく宣言を基本としつつ、機械規則への対応状況をどのように文書化するか確認しておくことが重要です。
宣言書の切り替え対応についても注意を払わなければなりません。
15. 既存機種の見直し
機械指令でCE対応済みの機械について、機械規則への切り替えが必要かどうか確認して下さい。
継続生産される製品については、注意しなければなりません。
2027年1月20日以降にEU市場へ上市する機械については、機械規則 Regulation (EU) 2023/1230 に基づく対応が必要になります。
この期日は変更されないと思われますので、早めの確認と対応が必須になります。
16. シリーズ製品(派生機種)への対応
シリーズ製品として機械指令に対応している機種についても、機械規則への対応について見直しを行っておく必要があります。
特に、図面の改訂は必要になってくることが多く、対応できているかどうか、確認が必要です。
17. 電子マニュアル
機械規則では、取扱説明書は紙媒体ではなく、PDFファイルなどのデジタル形式での提供も認められます。
デジタル形式で取扱説明書を提供する場合、ユーザーにどのように提供するのか、使用者が確実にアクセスできるかなどを確認しなければなりません。
18. 社内体制の見直し
機械指令から機械規則への切り替えにあたっては、対応すべき事項が多岐にわたります。
そのため、設計、電気、制御、品質保証、技術文書作成などの担当範囲を明確にし、誰が何を担当するのか、また、どの部門が全体を管理するのかを、社内体制として整理しておくことが重要です。
19. 対応スケジュール
機械規則への対応は、2027年直前に始めると間に合わない可能性があります。
特に、以下のようなケースでは、早めの確認をおすすめします。
- EU向けに継続出荷している機械がある
- 機械指令でCEマーキング済みの既存機種がある
- 派生機種や類似機種を出荷している
- 生産ライン全体でCEマーキングが必要
- 安全回路の評価資料が不足している
- EMC試験を実施していない
- 技術文書が十分に整備されていない
- 取扱説明書の安全記載が不足している
- サイバーセキュリティの評価を実施していない
既存機種であっても、機械規則に基づいてリスクアセスメント、技術文書、取扱説明書、EU適合宣言書を見直すことで、2027年以降の出荷に備えることができます。
まとめ
機械規則 Regulation (EU) 2023/1230 は、2027年1月20日から適用されます。
機械規則への対応では、対象製品の確認、適用法令の確認、整合規格の確認、リスクアセスメント、安全回路、電気安全、EMC、サイバーセキュリティ、取扱説明書、技術文書、EU適合宣言書など、幅広い項目を確認する必要があります。
特に、既に機械指令でCEマーキングを行っている機械であっても、機械規則への切り替えに向けて、リスクアセスメントや技術文書の見直しが必要になる可能性があります。
イーエムテクノロジーでは、機械規則に対するリスクアセスメント、事前評価、電気安全評価、EMC試験、取扱説明書の確認、技術文書作成、EU適合宣言書の作成まで、CEマーキングに関する技術支援を行っています。
EU向け機械のCEマーキング、機械指令から機械規則への切り替え、技術文書の見直しなどでお困りの場合は、お気軽にご相談ください。
イーエムテクノロジー株式会社
技術部
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